会長挨拶

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東京大学拳法会 会長 板東 雅武

このたび、渡邉泉郎前会長の後任として、拳法会の会長をおおせつかりました。 初代会長の大嶋仁先輩をはじめ歴代の錚々たる方々の跡を継がせて頂くこととなり、誠に光栄に存じております。と同時に、重い責任を感じています。
特に、3年後には東大空手部創部百周年を迎えます。私自身、40数年前、創部50周年記念の祝宴で進行役を務めた経験がありますが、今回は、大正14年 (1925年)から「一世紀」の長きにわたって、多くの先輩や現役の方々が力を尽くして築き守ってきた伝統を寿ぐときであります。また、次の百年への一歩を踏み出すときでもあります。理事会や事務局の皆さんと共に、この特別なときを迎える準備を進めてまいります。会員皆様からも忌憚のないご意見やご提言を頂くことができれば大変ありがたく存じます。
ところで、この2年あまり、新型コロナウイルス感染症の蔓延で、私たちの日常が大きく変わりました。空手部の稽古や対外試合も大きく制限されましたが、昨年秋頃から活動が本格化しつつあり、七帝戦や国公立大会などで立派な戦績を上げているのは喜ばしいニュースです。現役の皆さんには、コロナ禍でロスした分も取り戻す気概で、稽古に励み、対外試合に力を尽くし、仲間との交わりを深めてもらいたいと願っています。
この自粛期間、私自身の体調維持法は週3,4回の「形」の練習でした。一、二の形を何回か繰り返すという手軽なものですが、一人で、道具なしで、狭い場所でも稽古ができるのは空手の利点です。何より心が落ち着きます。また、「和道流」の良さを、なにがしか感じとることができたようにも思います。「空手の形は各流派の技の設計図だ」と言われます。この点、「和道」を創始された大塚博紀先生は、肉体的に強い者だけでなく、強くない者であっても身を守ることのできる術を究めようとされたのではないかと(勝手ながら)推測しています。「和道」の技の強みは、相手の攻撃を「流し」あるいは「捌き」、その力を利用することにあると言われます。まさに、フィジカルの差に関わりなく、勝つための工夫を可能にする教えです。技の設計図としての「形」、骨組みである「基本組手」、そしてその「応用技」(*)の稽古は、「形」演武は勿論のこと、「組手」についても、その質を上げることに繋がる筈と信じています。特に現役や若手OB/OGの皆さん、機会を見つけて(夏休みなどに)何か一つの「形」(平安でもクーシャンクーでも。あるいは他の形でも)を何十回、何百回、集中的に稽古してみては如何でしょう。「自分の形や組手が変わった」と実感するようになると思います。(*「応用技」は創部80周年を記念して纏められた『空手技術研究』の『続編』に詳しい)
最後に、拳法会の主な目的は空手部の活動を支援し、会員相互の親睦を深めることにあります。この2年余は不十分な活動を余儀なくされましたが、できるだけ早く活動を旧に復し更に発展させたい所存です。拳法会や空手部の活動をよりよく知って頂けるよう工夫したいとも考えています。皆様の一層のご理解とご支援、そして活動への積極的な参画を得て、空手部・拳法会が益々発展していくことを願っています。

東京大学拳法会会長 板東 雅武(2022年5月記)