前会長挨拶

watanabe 
東京大学拳法会 前会長 渡邉泉郎
拳法会会長となり、OB・OG・現役部員の皆様のご支援、ご協力のお陰を得まして、今年退任することとなりました。ここ2年間はコロナ感染の拡大により、現役部員は十分稽古が出来ないことや各種大会が中止となるなど大変ご苦労をお掛けしました。
私は、卒業後警察庁に入庁し、色々なポストを歴任し、平成10年に退官致しました。その間昭和46年に「警視庁空手倶楽部」を、昭和58年に「愛知県警空手部」を、昭和61年に「千葉県警空手部」を、平成8年に「神奈川県警空手部」を創部しました。平成9年に伊達先輩とともに「全国警察空手道連盟」を結成し、第1回大会を神奈川県警において5都府県(警視庁・兵庫県警・愛知県警・千葉県警・神奈川県警)参加の元開催致しました。その後連盟には他府県空手部が次々に加わり現在は20を越えた都府県県警が参加し、原則毎年大会を開催しております。
平成10年に警察庁を退官した後は、「七徳堂」に顔を出すようになり、技術指導員として現役部員の指導に当たってきました。その後拳法会員として、副理事長・理事長・副会長・会長として創部「80周年」、「85周年」、「90周年」記念行事開催に携わってきました。平成22年から28年までは龍野先輩の後任として「技術指導員長」を務めさせて頂きました。最も記憶に残るのは、80周年に刊行した「新版・東京大学空手技術研究」及び85周年に刊行した「続・東京大学空手技術研究」に携わったことです。70周年記念号を参考にしつつ、石塚先輩の指導の元で原稿・写真・ビデオのCD化などに取り組みました。現役の皆さんも繰り返し読んで下さい。この本の中に「和道流」の真髄が書かれています。現在は、自由組手中心の稽古が中心ですが、「その場基本」・「「移動基本」をしっかり身に付けて下さい。その上で「形」・「基本組手」に取り組んで下さい。ここをしっかりと鍛錬すれば後の「自由組手」の向上につながるのです。これを忘れて「自由組手」中心に稽古すれば一定の成績収めることができるでしょうが、必ず壁に突き当ります。このことを念頭に鍛錬(千日・万日の稽古)することをお薦めします。
「武道」は「護身術」であると同時に「矛を収める」こと、すなわち世界の平和と繁栄をもたらすことを目的として鍛錬するものです。私は「心・技・体」の3つを重視して、50年近く鍛錬を積んできました。現役の皆さんも学生時代で終わることなく、「生涯空手」を目指して下さい。現役時代苦節に耐え、勝利を目指した努力は、社会人となっても必ず役に立つことがあります。
警察の仕事は、瞬間の判断を求められることが多々あります。
危機的状況の時「平常心」を保ち、冷静に対応することが責任者には求められます。空手部時代の経験が如何に役立つのかがその立場になると分かると思います。宮本武蔵は、「独行道」の中に、「我事におゐて後悔せず」と書いております。ある問題を一度決断したらその成否は後世になってから分かります。「後悔先に立たず」という言葉の如く、躊躇うと部下の人は不安を感じます。決断することが求められるのです。空手の組手でも相手の攻撃にひるんで後退し、負けた経験は誰にもあります。必ず前に出て勝負しましょう。勝ち負けは結果であり、後で後悔することないようにして下さい。最近「全国公立大会」や「七帝戦」で東大空手部は優勝するなどの優秀な成果を上げています。部員は、一致団結して勝利を目指して下さい。結果はどうあれ悔いのない戦いをすることを心掛けて下さい。現役部員のご健闘をお祈りします。 尚、4年後には創部「100周年」記念行事が待っています。先輩のOB・OGの長年にわたる努力の賜物であります。全員で盛大にこの記念事業を成功させましょう。
皆様のご健康、ご多幸を祈り、私の退任の挨拶と致します。

昭和38年入部 渡邉 泉郎(令和4年5月記)